少年亜武(あぶ)

少年亜武(あぶ)5

亜武は先頭車両に乗り込んだ。
先頭車両は自由席で
父・輝(てる)から
乗るように指示されていたからだ。
.
車掌から特急券の提示を
求められたときに備えて、
すぐに出せるように
リュックサックのポケットに
特急券があるか確認した。
.
亜武が乗っている車両には
亜武一人しかいなかった。
.
父・輝が言っていたことを
思い出した。
.
「いまはコロナパンデミックで
外出自粛になっているため
外出する人が少ない。
.
指定席じゃなくても
自由席でもガラガラだと思う」
.
実際、犬吠駅から乗った銚子電鉄も
JR銚子駅も特急しおさいも
ガラガラだ。
.
父・輝はこんなことも言っていた。
.
「テレビに出ているような人たち
芸能人、政治家、天皇などは
サタンを拝んでいて
子供を連れ去り、殺している」
.
「いま無事に暮らせているのは
神様に守られているから」
.
「神様に守られなくなったら
パパもママも亜武も希花も
いつ殺されるかわからない」
.
亜武は父・輝が話していたことを
回想しているうちに
いつか眠りに落ちていた。
.
東京駅への到着時間は
午後3時10分。
.
乗車時間 1時間49分のうち
どのくらい寝ていたのだろうか。
.
携帯の時計を見ると
午後2時59分だった。
.
「あと少しで東京駅だ」
.
亜武は横の座席に置いていた
リュックサックを肩に背負って
到着を待っていた。
.
車内に長いアナウンスが
流れてきた。
.
乗り換えの案内のようだ。
.
亜武は父・輝がホームまで
迎えに来てくれているはずなので
案内を真剣に聞く必要はなかった。
.
東京駅に着いたようだ。